O医師とSさんの対談形式で、甲状腺機能低下症について説明いたします。
Sさん:先生、甲状腺機能低下症とはどのような状態を指すのでしょうか?
O医師:甲状腺機能低下症は、甲状腺が十分な甲状腺ホルモンを産生しない状態を指します。このホルモンは、体の代謝やエネルギーの使用を調節する重要な役割を果たしています。
Sさん:具体的にはどのような症状が現れますか?
O医師:主な症状として、疲れやすさ、体重増加、寒さに対する感受性の増加、皮膚の乾燥、便秘、筋肉のこわばり、記憶力の低下などが挙げられます。これらの症状は徐々に進行することが多く、見過ごされがちです。
Sさん:甲状腺機能低下症の原因は何でしょうか?
O医師:最も一般的な原因は、自己免疫性の橋本病です。これは、免疫系が誤って甲状腺を攻撃することで炎症を引き起こし、ホルモンの産生が低下します。その他の原因として、萎縮性甲状腺炎、甲状腺手術の影響や放射線治療、ヨウ素の不足などが挙げられます。
Sさん:診断はどのように行われますか?
O医師:血液検査で甲状腺刺激ホルモン(TSH)と遊離サイロキシン(FT4)の値を測定します。TSHが高く、FT4が低い場合、甲状腺機能低下症と診断されます。
Sさん:橋本病と診断された場合は、必ず甲状腺機能が低下しているのですか?
O医師:成人の甲状腺機能低下症のほとんどの患者さんは橋本病ですが、橋本病の方が必ず甲状腺機能低下症をきたすわけではなく、概ね20%程度の方が甲状腺機能低下症を認めるといわれています。一般的には毎年1~2%の方が甲状腺機能低下症をきたすといわれていますので、定期的な経過観察は受けていただくほうがよいと思います。
Sさん:治療法について教えてください。
O医師:治療の基本は、甲状腺ホルモン製剤の服用です。適切な投与量を決定するため、定期的に血液検査を行い、ホルモン値をモニタリングします。
Sさん:甲状腺ホルモン薬に副作用はありますか?
O医師:体の中にあるホルモンですので、適正な量で内服していれば副作用がでることはありません。ホルモンが過剰になると、動悸や手足のふるえ、発汗などの症状が出現しますので、その場合は主治医の先生に相談してください。
Sさん:甲状腺ホルモン薬はいつ飲むのがよいですか?
O医師:忘れないという点では朝食後などに内服することが多いですが、食事によって影響を受け、特に食物繊維が多いと吸収が悪くなりますので、就寝前に飲むというのが最も影響がでないと思います。
Sさん:甲状腺ホルモン薬と一緒に飲んではいけない薬はありますか?
O医師:いろいろな薬が飲み合わせにより吸収、代謝に影響を及ぼします。特に、鉄剤やアルミニウムが入っている薬は甲状腺ホルモンの吸収が悪くなりますので、避けてください。また、薬ではありませんが、青汁や野菜ジュースと一緒に飲んでも吸収が悪くなるので注意が必要です。
Sさん:生活習慣で注意すべき点はありますか?
O医師:特定の食事制限はありませんが、バランスの良い食事と適度な運動を心がけることが重要です。また、ヨウ素の過剰摂取は避けるべきです。
Sさん:甲状腺機能低下症を放置すると、どのようなリスクがありますか?
O医師:適切に治療しないと、心血管疾患や高コレステロール血症、さらには意識障害などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。早期の診断と治療が重要です。
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