慢性腎臓病


慢性腎臓病は、腎臓の機能が徐々に低下し、最終的には腎不全に至る可能性のある疾患です。日本では成人の約13%が慢性腎臓病を患っていると推定されていますが、その多くは自覚症状がないため、早期発見が困難です。

 

Sさん:最近、健康診断で「慢性腎臓病の疑いがある」と言われました。慢性腎臓病とは具体的にどのような病気なのでしょうか?

O医師:慢性腎臓病は、腎臓機能に3か月以上持続する異常がある状態を指します。これにより、老廃物や余分な水分を適切に排出できなくなり、老廃物が体内に蓄積されることでさまざまな健康問題を引き起こします。

Sさん:慢性腎臓病の主な原因は何ですか?

O医師:主な原因として、糖尿病や高血圧が挙げられます。これらの疾患は腎臓に負担をかけ、長期的に腎機能を低下させる可能性があります。その他の原因としては、慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎、腎結石、前立腺肥大などの泌尿器系の問題が考えられます。

Sさん:慢性腎臓病はどのように診断されるのでしょうか?

O医師:慢性腎臓病の診断には、血液検査での血清クレアチニン値の測定や、尿検査での蛋白尿の有無を確認します。腎臓のろ過機能を示す指標である推算糸球体濾過量(eGFR)を算出し、腎機能の状態を評価します。

Sさん:慢性腎臓病の治療方法について教えてください。

O医師:慢性腎臓病の治療は、進行を遅らせ合併症を予防することが目的です。具体的には以下のような方法があります。

  • 生活習慣の改善:バランスの取れた食事や適度な運動を心がけ、肥満を防ぐことが重要です。特に、塩分やタンパク質の摂取を適切に管理することが推奨されます。
  • 血圧の管理:高血圧は慢性腎臓病の進行を加速させるため、降圧薬の使用や生活習慣の改善により、血圧を適切にコントロールすることが重要です。
  • 血糖値の管理:糖尿病が原因の場合、血糖値を適切に管理することで、腎臓への負担を軽減します。
  • 薬物療法:必要に応じて、腎保護作用のある薬剤や、貧血を改善する薬剤を使用します。近年、SGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者だけでなく、非糖尿病性の慢性腎臓病患者にも有効であることが示されています。 これらの薬剤は、腎機能の低下速度を遅らせ、腎不全のリスクを低減する効果があります。この効果は、糖尿病の有無に関わらず観察されています。慢性腎臓病の進行を遅らせ、腎機能を保護するためには、SGLT2阻害薬以外にも以下の薬剤が有効とされています。

    1. ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬

    血圧を下げる効果に加え、腎臓を保護する作用が期待されています。ただし、これらの薬剤は血中のカリウム濃度を上昇させる可能性があるため、使用時には注意が必要です。

    2. アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)

    ACE阻害薬とARBは、血圧を下げるだけでなく、腎臓の保護作用も持つとされています。これらの薬剤は、腎臓の糸球体内圧を低下させ、蛋白尿を減少させることで、腎機能の悪化を防ぐ効果があります。

    3. 糖尿病治療薬

    DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬などの糖尿病治療薬も、血糖コントロールを通じて腎機能の保護に寄与する可能性があります。これらの薬剤は、血糖値を適切に管理することで、糖尿病性腎症の進行を遅らせる効果が期待されています。

Sさん:慢性腎臓病を予防するためには、どのようなことに気をつければ良いでしょうか?

O医師:慢性腎臓病の予防には、以下の点に注意することが重要です。

  • 定期的な健康診断:早期発見・早期治療が重要です。特に、糖尿病や高血圧のリスクがある方は、定期的に腎機能の検査を受けることが推奨されます。
  • 健康的な生活習慣:バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、適正体重の維持など、全身の健康を保つ生活習慣が腎臓の健康にも寄与します。慢性腎臓病において、適切な食事管理は腎機能の維持と病状の進行抑制に不可欠です。食事療法の主なポイントは以下の通りです。
  • タンパク質の制限: 過剰なタンパク質摂取は腎臓に負担をかけるため、適切な量(通常、体重1kgあたり0.60.8g)の摂取が推奨されます。
  • 塩分の制限:高血圧や浮腫を引き起こす可能性があるため、塩分摂取を控えることが重要です。
  • カリウムとリンの管理: 腎機能が低下すると、これらのミネラルの排泄が困難になるため、カリウムやリンを多く含む食品(バナナ、トマト、乳製品、ナッツ類など)の摂取を調整する必要があります。

これらの食事療法は、患者の病状やライフスタイルに合わせて専門の医師や栄養士と相談しながら進めることが重要です。

Sさん:慢性腎臓病は進行するとどのようなリスクがありますか?

O医師:慢性腎臓病が進行すると、末期腎不全に至り、透析療法や腎移植が必要となる場合があります。また、心血管疾患のリスクも高まるため、全身の健康管理が重要です。

Sさん:ありがとうございました。生活習慣を見直し、健康管理に努めたいと思います。

O医師:その意識が大切です。何か気になることがあれば、いつでもご相談ください。


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